久しぶりに映画を見た。
原作本の「とある飛空士への追憶」は自分の中でベスト10に入る良い小説だったのだが、映画は非常に残念だった。
自分の感じた原作の良かった所は、3つ有った。
- ストーリー
所謂ボーイミーツガール物なのだが、その王道の中の王道を行く素直さで、自分も楽しめたし一般受けする内容だと思う。 - 空戦の描写
空を飛ぶ者の一人として感じるのだが、その描写が素晴らしく良かった。
その内容に間違いや破綻が無いのは当然。
その上で、坂井三郎の戦記を彷彿させる命を賭けたテクニック、敵機を引きつけての掃射など、見応え十分だった。 - 表紙
これまで、本の表紙を見て感動した事など無かった。
そしてこの本も読む前では分からなかったのだが、読み終えた後に表紙を見返して、感動した。
クライマックスの素晴らしさと相まって、こんな体験は初めてだった。
本の評価として表紙を持ち出すのは如何なものかと思うが、それを吹き飛ばすほどの感動だった。
この小説は、(恐らく1.の内容だけで)かなり売れた。
その後マンガにも展開され、文庫での始まりが新装版として単行本になったり、続編が作られたりした。
そして今回、映画化された。
原作の良さを期待して映画館に入ったのだが、それは裏切られてしまった。
- ストーリー
キーとなるエピソードが、消えてる。
全体の内容は変わっていないんだけど、原作の持つ流れの良さが無くなってる。 - 空戦の描写
機体の挙動が不自然な上、キメ技の描写が観客に全く伝わらない。
あの位置の荷物室にあれ程の重量物があったら、速度が出せない以前にまともに飛べないんじゃないか?
ってか、予備風防なんて入れてたっけ?
そもそもフロートを格納するとか、ありえ無いよ。
そして何より、敵の機銃を右に左に避けるのは、原作を無視、いや原作を愚弄している。 - 表紙に相当する部分の描写
クライマックスでの盛り上がりが、原作に及ばない。 - 声
声優の声が、たどたどしさを感じる。
特にヒロインの声が残念だった。
(但し、芸人のサンドウィッチマンの富澤たけしを起用したライバル千々石(ちぢわ)の声は、意外と悪くなかった。)
続編は買っておきながらまだ読んでいないのだが、口直しがてら読んでみるか。